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「あ、立花くんたち」
更衣室に飛び込んで来た同じくバイトの野々宮くんが、俺たちの姿を発見すると駆け寄ってきた。
「良かったー。俺、今から隠れるから匿ってね」
そんなことを言いながら使用されてないロッカーを探すとその中に入ろうと片足を突っ込む。
「うわーん、入れないよー」
でしょうね。
流石に無理でしょ。
「また何かやらかしたの?」
そんな野々宮くんに溜め息交じりで尋ねた。
「なんもやってないって!ただポッキー摘まみ食いしてたの見られただけ」
まぁ、そんなことだろうとは思ったけど。
この半泣き状態の人は野々宮雪都(ノノミヤ ユキト)くん。
俺とりょーちんと同じ19歳で、バイト歴も同じくらい。
カラオケ部門で働いているから自然と仲も良くなった。
「ほんと、懲りないね」
毎回毎回ポッキー摘まみ食いして店長に追いかけられるのがこの人の日常。
っていうか、あの店長の前でよく食えるな。
「だって、そこにイチゴポッキーがあるんだもん!」
いや、だからって普通は食わないでしょ。
「……ぉらぁー!野々宮ー!」
そんなことを話してると、遠くから怒声が聞こえてきた。
「ぎゃー!鬼店がくるー!」
ロッカーに隠れるのを諦めた野々宮くんが、救いを求めるように俺たちの顔を見比べた。
ちょっ、あの店長相手に無理だし。
俺だってこえーよ。
「…ここならいけるんじゃない?」
そんな野々宮くんを見兼ねた亮が、ロッカーと壁の隙間を提案した。
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