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「今からか?」
「はい」
「そうか。今日も宜しく頼むな」
「もちろんです」
店長相手に淡々と会話を進めてく亮は尊敬に値する。
俺は亮の背中をそんな気持ちで見ていた。
「所で、野々宮が来たろ?」
ギクッ!
やっぱその話になりますよね…。
「野々宮くんですか?今日はまだ見てませんけど、また何かしたんですか?」
「まぁ、いつものことだ。で、どこにいる?」
「だから、今日はまだ見てませんって…」
グイッと、亮の後ろに隠れる俺の方を覗き込む店長の視界を遮るように、亮が体をずらしてくれる。
おかげで、隠れることは出来たけど、こんなんじゃバレるの時間の問題だって。
あー、匿うなんてバカげたことしなけりゃ良かった。
「それに、悲鳴あげながら前の廊下を走り抜けてくのは聞こえましたよ?」
そう付け加えた亮を、店長は明らかに疑いの目で見ていた。
それでも臆することもなく目を逸らさずにいる亮に、店長はフと視線を落とした。
そして「そういうことにしといてやるよ」とそれだけ言うと、踵を翻し更衣室を出て行った。
そんな店長の後ろ姿を見送って、ドアが閉まるのを確認した俺たちが、ハァーと胸を撫で下ろしたことは言うまでもない。
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