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「いや~、三上くんってほんと頼りになるよね」
空になったグラスを下げに行ってた野々宮くんが、そんなことを言いながら厨房に戻ってきた。
「三上くんには何回助けられたことか」
洗い場にグラスを置きながら、野々宮くんがうんうんと一人頷いてる。
「ねえ?聞いてる?立花くん」
横でアゲアゲコンビの唐揚げとポテトが揚がるのを待つ俺の腕を、野々宮くんが突ついた。
「あー、聞いてる聞いてる」
「ほんとに聞いてんのー?あの時俺のこと見捨てようとしたくせに」
あ、やっぱバレてたんだ?
「そりゃそうでしょ。誰が好き好んで店長敵に回すようなことすんの?」
そんなのあんたぐらいだよ。
「別に俺だって敵に回すつもりなんてないよ」
「だったらいい加減学習しようよ」
呆れたように言って野々宮くんを見ると、その手にはいつの間にかポッキーがあった。
「何持ってんの?」
「えーと、イチゴポッキー?」
そう答えながらポキッとかじり折った野々宮くんは、箱から1本取り出すと俺に差し出した。
「欲しいんでしょ?」
「いるかー!つかあんたの頭ん中脳ミソ入ってんの?さっきそのせいで店長に追いかけられたばっかじゃないか!」
どんだけ本能のままに行動してんだ、この人は!
「えー?大丈夫だって。いくら店長でもまさかこんなすぐに食ってるとは思わないって。ていうか、さっきあんまり食えなかったしさ」
とか言いながら2本3本と食べ進める野々宮くん。
背後に現れた影にも気づかない様子でとても幸せそうだ。
「野々宮くん」
「なーに?やっぱり欲しいの?」
「んーと、そのごめんね。俺じゃ助けられない」
「え?なにが?」
俺の言葉の意味が分からない様子で首を傾げた野々宮くんは、肩にポンと手を置かれた瞬間それまでサクサクと食べていたポッキーの動きを止めた。
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