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「おはよう、葉。今日は土曜日なのに早いね」
次の日の朝。
起きてリビングに入った俺に、エプロン姿の父さんが声をかけた。
「ん、おはよう。俺だってたまには早起きぐらいするよ」
ダイニングテーブルにはすでに身支度を整えた高臣さんと碧が座っていた。
「目玉2個でいい?」
「今日は1個でいいや」
カタンと二人の前にそれぞれ目玉焼きを乗せたお皿を並べて、父さんが俺を見る。
俺は椅子に座るのをいいことに、父さんを見ないようにした。
いつも通りの父さん。
「おはよう、葉くん。もしかしてバイトが早番なのかい?それとも大学?」
目の前に朝食が用意されて、高臣さんはそれまで読んでいた新聞を畳んだ。
高臣さんも至って普通。
「いえ、そういう訳じゃないですけど…」
「そうなのかい!?悟さんから、葉くんは用事がない限り昼過ぎまで余裕で寝てるって聞いてたからてっきり何かあるのかと…」
なんだよ、その無意味な情報。
そりゃ間違ってはないけど、誰のせいで眠れなかったと…。
「悟さん、葉くん、ちゃんと早起き出来るみたいですよ?」
「あれー?おかしいなー?」
父さんも、おかしいなー?じゃないよ。
カウンター越しで会話している二人を眺める。
この二人が、昨日の夜(正確には0時を回っていたから今日なんだけど)あんなことしてたのか…。
なんか、信じられねーな。
「あーあ、早起きなんかしないで下さいよ。折角後で起こしにいこうと思ってたのに」
そんな俺の横に座っていた碧が、俺だけに聞こえるくらいの大きさでボソッと呟いた。
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