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カチャ。
「おはよ」
リビングのドアを開ける。
「あ、葉。おはよう」
俺の姿を見て、慌てたように父さんが高臣さんから離れた。
「パン食べるよね?」
「うん」
少し乱れた髪を気にしながらキッチンへと戻って行く。
「碧くんもいつも通りでいい?」
「はい。ありがとうございます」
俺の後から入ってきた碧にも聞いて、父さんが背中を向ける。
その耳はここからでも分かるくらいに赤く染まっていて、俺達がいない二人きりのダイニングで何をしていたのかを想像するには十分だった。
碧も居づらいんだろうな。
だから、毎朝俺の所に逃げてくるのか。
チラリと碧を見ると、屈託のない笑顔が返ってくる。
「碧の目覚ましもだいぶ板についてきたようだね」
「はぁ、おかげさまで。早起きになりましたよ」
高臣さんの言葉に嫌味たっぷりで答える。
何ですか?
俺が早く起きてきたもんだから不満なんですか?
もっともっと父さんとイチャつきたかったって顔に書いてありますよ。
つーか、あんたら昨日もヤってたでしょ?
いい歳してがっつきすぎだっつーの。
…まぁ、それをオカズにしてる俺も人のこと言えねーけど。
「碧くんも、いつもありがとうね」
碧の前に焼けたパンを置いて父さんが言った。
「いいえ、兄さんを起こすのは弟の役目ですから」
「ふふっ。いい弟が出来て良かったね、葉?」
「どこが、いい弟なんだよ!?」
「えー?いい弟じゃないですか!兄さんの下の世話まで…ふぐぐっ!」
慌てて碧の口を塞ぐ。
ば、ばかやろ!
下の世話とか言うなっ!
「え?何?よく聞こえなかったけど」
「な、何でもない!こんないい弟が出来て嬉しいなって。な?碧?」
「はい!俺も嬉しいです」
はぐらかすように言った俺の言葉に、碧は素直に嬉しそうに笑った。
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