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JR新宿南口駅の改札前で幼馴染みの山村守人(やまむらもりと)、通称もっさんと待ち合わせをしていた。
忙しそうに人が行き交う構内を眺めながら、もっさんがやって来るのをぼぅとしながら待っていた。
「草(そう)ちゃ~ん」
周りにいる人がぎょっとする位の大きな声で名前を呼ばれてびっくりした。声のする方に顔を上げると、人込みの中でもっさんがこちらに向かっておおいと手を振りながら、近づいて来た。
「もっさん、久しぶり」
ぐりぐりのボウズ頭にまん丸の顔、あだ名がもっさんなのは、小学生の時から老け顔で、うっすらと口の周りにヒゲが生えていたことから、おっさんがもじってもっさんになった。歳を追うごとに段々、気にならなくなってはきているものの、23歳になった今でも、一緒にいるともっさんの方が年上に見られることが多い。
顔がくしゃくしゃになる程、大きな笑顔を浮かべて、もっさんは改札口を出て来た。首には白いタオルを巻き、後ろに背負うキャンバス生地のカーキ色のリュックは高校時代から使っているものだ。
NBA好きのもっさんが応援しているセ●ティックスのロゴが入ったTシャツに、お気に入りのオーバーオール。オーバーオールに関しては季節を問わず着用しているので、膝小僧が擦りむけたのをもっさんのお母さんが直してくれたらしい。
両膝に、くまちゃんのアップリケがついていた。もっさんスタイルだ。あの頃のもっさんのままだ。いつまでたっても高校生の時のままのもっさんが微笑ましい。
「やぁ、久しぶり」
右手を挙げて、僕の前に立つもっさんの足元に目がいき、えぇ!?と思わず二度見してしまった。
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