第1章~まだ、知らない~

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「香澄、帰ろうぜ!」 部活が終わった恵ちゃんがテニスコートまで迎えに来る。 恵ちゃんはバスケ部で、体育館からテニスコートまでは結構距離があるのに必ず迎えに来てくれる。 「もうちょっとで終わるから待ってて!」 ラケットとボールを持っていた私は急いで片付けに行く。 「お疲れ様でした!」 そう言って急いで着替えに行く。 とりあえずパウダーシートで体を拭いて、制服に着替える。 ポニーテールだった髪を解いて・・・ふと肩ぐらいまである少し暗めの茶髪が目に入る。 「伸びたな・・・」 そろそろ切った方が良いかな?と思いながら櫛で梳く。髪が引っ掛かって痛い。 本当はもっとちゃんと体拭いたり髪を綺麗にしたいけど、あまり待たせるのもよくないから、とりあえず最低限必要な事だけやって更衣室を出る。 「別にゆっくりでいいのに。」 そう言う恵ちゃんの横を歩く。 「だってあんまり待たせるのも悪いし・・・」 「俺は別に気にしないよ?勝手に待ってるだけだし。」 そう言って恵ちゃんが笑う。 この人はどこまで優しいのだろうか・・・ あ、そうだ。 「あ、あのね恵ちゃん。」 「ん?」 「オリエンテーションって恵ちゃんのクラスはどこ行くの?」 やることは一緒だけどオリエンテーションの場所はクラスによって違う。 「1組と同じとこだよ。」 さらに恵ちゃんがニコッと笑う。 「え?クラスで違うんでしょ?」 「2クラスごとに分けられてるらしいぜ。で、たまたま1組と2組が同じってわけ。」 一緒の電車だぜ。と恵ちゃんがVサインをする。 学校では・・・というか私以外の人の前では、クールというかどこか冷めた感じなのに、私の前では子供っぽくなる。 「で、俺さ買い出しの係になっちゃったんだけどさ。全然分かんないから前の日買い物手伝ってくんね?」 恵ちゃんが顔の前で両手を合わせてお願いポーズをする。 「いいよ、私も買い出し行かないといけないし!」 恵ちゃんがマジで!?って言いながらガッツポーズをしている。 そんなに私と買い物行きたかったのかな? 「ちなみに恵ちゃんのグループは何を作るの?」 「カレー。」 同じだ!と2人で笑う。 やっぱり定番なのかな・・・ でも、こっちはカレーうどんだ。って言うと同じだろ!って恵ちゃんが私の頭にポンって手を乗せた。
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