第1章~まだ、知らない~

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放課後は恵ちゃんの家か私の家のどっちかで一緒に過ごすのが私達の日課。 今日は私の家。 どっちも共働きで夜の9時ぐらいまで家に親はいない。 7時ぐらいに私のお姉ちゃんが帰ってきて、8時ぐらいに恵ちゃんの妹美和(みわ)ちゃんを保育園に迎えに行く。 だから家族の分と自分達のご飯を当番制で作る。今日はお姉ちゃんが作る番。 「ただいま~」 「ただいま。」 私達が玄関を開けると、飼い猫のモカが出迎えてくれる。 私達が帰ってくる時間が分かっているのか、必ず玄関に座っている。 「ニャア」 そう言って擦り寄ってくるモカの喉を撫でてあげると満足そうにリビングに帰っていく。 そのあとを2人でついていく。 「あ、そうだ!」 鞄を置いた私はケータイを持ってモカに近づく。 「モカ~こっちおいで!」 私が両手を広げると腕の中にスッポリと収まる。 「恵ちゃん!ちょっと写真撮って!」 そう言って恵ちゃんにケータイを渡す。 カシャッて音が鳴る。 「ん。」 恵ちゃんからケータイを受け取り、確認する。 モカだけ撮ってって意味だったんだけど、ばっちり私も写っている。 恵ちゃんらしいって言えば恵ちゃんらしいんだけども。 とりあえず忘れる前にモカの部分だけトリミングする。 そしてモカの動画を録る。 「はーい、モカ!こっち向いて!」 カメラをまわしながらモカに声をかける。 ご丁寧にニャア~と返事が返ってくる。 「なんで今更モカの動画録ってるの?」 横から恵ちゃんが覗き込む。 「オリエンテーションのグループが一緒になった、佐伯君が猫好きらしくってさ!」 それで仲良くなった!って言うと恵ちゃんは興味なさそうにそっぽを向く。 「ふーん」 そして機嫌悪そうにこの一言。 私何か怒らせるようなことした? とりあえず動画が録れたから、写真と一緒に佐伯君に送る。 私から離れたモカは真っ直ぐ恵ちゃんの方へ行って、恵ちゃんの膝に乗った。 モカを撫でている恵ちゃんの顔はやっぱり不機嫌で・・・ 今までずっと一緒にいたけど、今回ばかりはなんで不機嫌なのかさっぱり分からない。 何か悪いことをしたのなら謝りたいんだけどなあ・・・
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