第1章~まだ、知らない~

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「香澄、そこ違う。」 「どこ?」 数十分も経つと恵ちゃんの機嫌もすっかり直っていた。 結局何が原因だったのかはよく分からないし、機嫌が良くなったきっかけもよく分からないんだけども・・・ で、今は2人で並んで宿題をしている。 自分ではできてるつもりなんだけど、結構恵ちゃんに直されることが多い。 「ここ、問2の途中から。」 指で教えてくれるけど何が違うのかさっぱり分からない私。 数学は特に苦手なんですよ・・・ 「それ以外は合ってるし、それができたらもう終わりだろ?ほら、頑張れよ。」 私が投げ出したシャーペンを手に持たせる。 「うぅ・・・分かった・・・」 私はしぶしぶ問題を解き直す。 「そう、でそこを・・・うん、そう。」 横から恵ちゃんが教えてくれる。 実は恵ちゃんの方が教え方が上手で分かりやすいってことは、先生にはナイショ。 というか、言ったらダメだよね。 「お、正解。よし、今日の宿題は終わったな。」 恵ちゃんが片付け始める。 「お姉ちゃん遅いね・・・」 すでに7時半。いつもお姉ちゃんは7時頃には帰ってくる。 「そうだな。連絡なしに遅くなるのは珍しいな。」 まあ、大学生だと色々あるんだろ?と恵ちゃん。 「俺、美和迎えに行くけど香澄も来る?」 「そうだなあ・・・行こうかな!」 私はメモ帳を出してお姉ちゃん宛てにメッセージを書く。 どっちが先に帰ってくるか分からないけど、一応ね。 「香澄、行くぞ。」 「うん!」 私はケータイと財布だけポケットにしまう。 電気も、ガスもついてないよね? 私は周りを見渡す。 うん、全部消えてる。大丈夫。 「香澄?」 「今行くよー!」
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