第1章~まだ、知らない~

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「美和、帰るぞ~」 保育園に着いてしばらく先生から話を聞いた後、友達と遊んでいる美和ちゃんに恵ちゃんが声をかける。 「はーい!」 大きな声で返事をした美和ちゃんは鞄を取って、帽子をかぶってこっちに走ってくる。 「あら、今日は香澄ちゃんも一緒なのね。」 「こんばんは。」 教室から出てきた先生が私に声をかける。 ここの保育園には昔からずっと勤めている先生が多い。 今の先生は私の担任だった先生。 卒園生の私を知っている先生も多いから、今でも時々顔を出したりしている。 恵ちゃんについてきたのは久しぶりだけど。 「相変わらず仲がいいのねぇ。」 先生がにっこりと笑う。 美和ちゃんと恵ちゃんのことかな? 「美和ちゃんは可愛いしお利口さんだし、恵ちゃんはとても優しいお兄ちゃんですから。」 そう私が言うと、先生はびっくりしたような顔をする。 「・・・恵人君も大変ね・・・」 恵ちゃんの方を向いた先生は苦笑いを浮かべていて・・・ そして恵ちゃんはため息をついている・・・ 何なの?いったい。 「よし、じゃあ帰るか。」 「うん!せんせーさよーならー!」 恵ちゃんが手を差し出す。その手を美和ちゃんがしっかりと握る。 「じゃあ、また来ます。」 「はーい、いつでも来てねぇ!」 先生に挨拶をした後、歩き出した2人の後ろをついて行く。 さっきの恵ちゃんの様子といい、今の会話といい・・・今日はよく分からないことが多い。 「香澄ちゃんー」 考え込んでいた私はいつの間にか立ち止まっていたみたい。 前を歩いていたはずの美和ちゃんが、いつの間にか私の横に来ていて服を引っぱる。 少し離れたところから、どうした?という顔で恵ちゃんが見ているから、私は急いで美和ちゃんの手を握って恵ちゃんのところまで歩いた。 「どうかした?」 心配そうに恵ちゃんが聞いてくる。 「ううん、何でもないよ~」 私はほら!って美和ちゃんのもう片方の手を恵ちゃんに握らせる。 そして、3人で並んで家へと帰った。
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