第1章~まだ、知らない~

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「恵ちゃん、ちょっと痛いよ・・・」 手を引っ張られながら学校を出た私は、さすがに手が痛いのとなんとなく恥ずかしくて恵ちゃんに声をかける。 「ああ、悪い。」 幸い恵ちゃんはすぐに手を離してくれたけど・・・ なんか、怒ってる? 「どうしたの?」 私が聞くとなんでもないって恵ちゃんは歩き出す。 なんとなくそれ以上聞けなくて、静かに恵ちゃんの後ろをついて行く。 「で、どこ行く?いつものスーパーでいい?」 少し歩くといつもの調子で恵ちゃんが聞いてくる。 だから、私もいつもの調子で話す。 さっきのこととか気になるところもあるけど・・・ 「んー・・・せっかくだから駅前のショッピングセンター行かない?」 明日着て行く服も買いたいからって言うと、了解って恵ちゃんが頷いてくれる。 「明日は材料とか、俺が向こうまで持ってやるからな。」 「え?悪いよ!恵ちゃん自分のもあるでしょ?それぐらい自分で持てるよ!」 さすがに持たせるのは悪いし、自分の荷物ぐらいは自分で持てる。 「そう?まあ、重かったら持ってやるから遠慮なく言えよ。」 「うん!」 よかった。いつもの恵ちゃんだ。 「じゃあ、行こうか。」 「そうだね。」 「そういえば。」 「ん?」 バスに乗り込んだ私達は1番後ろの席に座る。 「オリエンテーションって具体的に何をするか俺知らないんだけど。」 佑輔がうるさくてさ・・・と恵ちゃんが呆れた声を出す。 佑輔君がうるさくて話があまり聞こえなかったらしい。 「プリント配られなかった?」 そう、日程と場所が書かれたプリントが配られたはず。 「プリント?もらってない・・・と思う。」 「そう?なんか、行ってすぐに班ごとに森で宝探しするんだって。その後ご飯作って食べて、旅館で寝て次の日帰ってくるらしいよ。」 「へぇ・・・なんだ宝探しって。」 子供かよって恵ちゃんが笑う。 確かに高校生が宝探しってあんまりない気がするけど。 「楽しかったら何でもいいんだよ恵ちゃん。」 間違いねぇ!と2人で笑い合う。 クラスの人と話すのも楽しいけど、恵ちゃんと話すのはまた何か違う。 心が温かくなるというか、本当の私でいられるというか・・・
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