第1章~まだ、知らない~

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あれは、確か中学2年の時だった。 忘れたくても忘れられない、何とも言えない思い出だ。 クラスでやったクリスマス会の帰りだった。 「寒いねぇ・・・早く帰ろっか!」 相変わらず俺と香澄は並んで歩いている。 周りからはカップルだと思われているが、ただの幼馴染みだ。 けど、俺は“ただの”なんて思っていない。 俺にとって香澄は可愛くて大切でかけがえのない存在。 好きな女の子・・・だ。 俺としてはこの関係からもう少し前進したいと思っている。 香澄は女子はもちろん、男子にも人気がある。 たぶん、告白・・・もされたことがあると思う。考えたくはないけど。 「なあ、香澄。」 「なぁに?」 今日こそは・・・ 「もう少し2人でブラブラしないか?」 とりあえず、駅前に大きなクリスマスツリーがあったしそこに行こう。 そこからは・・・ノリで考えよう。 「うん、いいよ!」 あっさりと返事をした香澄と他愛無い話をしながら駅前へと向かう。 「わあっ!綺麗ー!」 駅前に着くと、予想通り香澄は目を輝かせた。 香澄は昔からこういうキラキラしたものが好きだと俺は知っている。 同時にクリスマスという行事が好きなのも知っている。 去年までサンタを信じていたからな・・・ 「そうだ!恵ちゃん、はい!」 香澄が鞄から小さめの箱を取り出す。 「あぁ、忘れてた。んじゃ俺も、はい。」 俺も紙袋を香澄に渡す。 「ありがと~!開けていい?」 「ああ、じゃあ俺も開けるか。」 香澄からのプレゼントは腕時計だ。 俺が好きそうなデザインを選んでいるのがまた嬉しい。 俺は女が好むものなんか分からないから、とりあえず香澄が好きそうなものを選んだつもりだ。 「可愛い!ネックレス!!これ、恵ちゃんが買いに行ったの!?」 「まあな・・・」 思い出させるな。相当恥ずかしかったんだよ・・・ で、どうする・・・ このまま帰ることになりそうだ。 ということは、言うなら今しかない。 「香澄。」 「ん?」 とりあえず一度深呼吸をする。 勢いだ勢い。言え!自分!! 「好きなんだけど。」 よし、言った。 とりあえず心臓がバクバクうるさい。 「うん、私も恵ちゃんのこと好きだよ。」 「え!?」 マジで!?と顔を上げる。 「だって恵ちゃんとは長いお付き合いだし、嫌いなわけないじゃない!萌絵ちゃんと同じぐらい好きだよ!」 「お、俺もそれぐらい好き・・・」
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