魔法をかけて

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「もちろんさ……と、言いたいけれど、そうだなぁ、揚げ足とられても面倒だから、ある程度条件は付けておこう。一、願いを増やすなど、それに値する願いは無効だ……だから、『願いを百個に増やして!!』とか、『なんでも思い通りに現実を改変する力が欲しい!!』とかは駄目だ。二、おじさんに対して、命令を行う……例えば、私を操る、なんて願いも駄目……必然的に、例えばおじさんに対して、『人を殺してきて』とか『強盗してきて』とか、そう言うのも駄目……まあ、制約はこんなところかな」 「ふうん……まあいいよ、もとから、そんな裏技めいた、バグ技めいたことを要求するつもりはない……なんて、嘘だけれど」 もしも条件を付けられなかったら、ぼくは願いを無限大にかなえることができる力を欲しただろう。それくらいの合理性は、すでに身についている……とは言え、それが制約として存在してしまっているのでは、仕方がない。 その考えは放棄するとして……と、すれば、制約で縛られていない分野で、願いを考えなくてはいけない……数は増やせないから、一回きり……それならば、いわゆる『ひかがくてき』なことを願った方がいいだろう。 例えばお金なんかは、魔法に頼らなくても、手に入る……足が速くなるのだって、練習すればなんとかなるだろう。頭のよさ……この場合の頭の良さは、賢さではなく学力と言う意味だけれど……それだって、勉強次第でどうにでもなる。 だから、願うとすれば、そう言う願いではなくて、そう、だから、普通に生活していては絶対に手に入らない、魔法でしか……奇跡でしか手に入らないものだ。 例えば、『えいぞうきおく』など……いわゆるサヴァン症候群において現れるような、異常特化能力を、リスクなしで……この場合は自閉症なんかが、それにあたるけれど……それをなしで、手に入れることができれば、恐ろしく生きやすくなるだろう。 あるいは、テレポーテーションのような、移動能力……それがあれば、時間の節約と言う意味でも、身体的、精神的負担と言う意味でも、ストレスレスな人生を送ることができる……この社会で、何が辛いかって移動が辛い。ぼくは電車も車も嫌いである。徒歩も嫌いである。自転車なんて論外だ。
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