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◇ ◇
焼けこげて、炭化しているおっさんの死体を、遠くの山の中に埋めてきた後、ぼくは余裕綽々で家に帰ってきた。テレポーテーションを使ったので、移動時間もかからず、また、念動力で土を操り、より深いところまで埋め込んだので、早々には発覚しないだろう。
なにより、もしも発覚しても、ぼくのような小学生が殺した、なんてことは、誰が思うだろうか。そもそも、死体を完膚無きまでに焼き尽くしておいたので、微生物たちによって、直ぐに分解されてしまうかもしれない。それならそれで、万々歳だ。
おっさんを殺したのち、ぼくの心は晴れやかだった。
あのまま、おっさんを野放しにしていたら、第二第三の超能力者が生まれて、ぼくの固有価値が消えかねなかった……まったく、特殊能力者と言うのは、一人いるから価値があるのであって、みんながそうであったら、それはもう特殊でもなんでもないではないか。
相対的に、超能力者の人数が増えるたびに、ぼくの価値が消えていくわけで……それは望ましいことではなかったので、そうならないために、おっさんを殺すことにした。
幸い、おっさんは一人につき一度しか願いをかなえない、と言い切っていたし、もうかなえてもらったぼくとしては、用済みもいいところだった……小学生が大人を殺せるのか、と言う疑問もあったけれど、貰った力が超能力だったので、それは実に簡単な仕事だった。余裕である。
「……ふふ」
ぼくは手のひらを見つめて、笑った……ぼくはこれで、世界にただ一人の超能力者である……これからの人生、実にバラ色にすごせるだろう。
お先真っ暗、黒色一色だったぼくの人生に、バラ色が添えられた……その事実はとても素晴らしいことであり、笑みが浮かぶのも仕方がないことだ。
自室で、ぼくは笑う。笑うことにした。たまには、大声で笑うのもいいだろう……ぼくだって、浮かれるときくらいある。
口を開く。
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