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胸が僅かに痛む。
そんな事を考えているようには思えない旅人が、寂しい事を言うのが辛い。
だが、僧もまた素直にはなれなかった。
「ついてきて、くれないか?」
「どうせ拒んだとしても、こうして強引に連れて行こうと思っているのでしょ」
旅人はニッと笑う。
そっぽを向いて言った僧の真意を、見抜いたようだった。
「そうだな、連れて行くかもしれない」
「ならば私に拒否権などないでしょ。伴をするより他にありません」
素直ではない僧の言葉に、旅人は嬉しそうに笑う。
そして僧もまた、旅人に見られないようにそっと、嬉しそうに笑ったのだった。
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