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旅人はすっかり服を脱ぎ去って、ふんどしだけの姿になって濡れた体を手ぬぐいで拭いている。
その体は見事に引き締まり、均整がとれて綺麗だった。
「…そんなに見るなよ」
「! 申し訳ありません」
言われて驚いた僧は、自分もコソコソと衣服を脱ぎはじめる。
ずっしりと雨水を含んだ服は重く、簡単には乾く気配がない。
それに、すっかり体が冷えてしまっているようだった。触れた自分の手が熱い。
それにしても、貧相な体だ。
僧は自分の体を見下ろして思う。
細く痩せて、色も白い。鍛えていたわけではないから、本当に貧相だ。
「そんな体で、旅なんて無謀だな」
ビクリと体が震えた。
旅人の絡みつくような視線を感じたのだ。背後から、舐めるように。
「あんた、いいとこの出だろ。武家か、貴族か」
「確かに生家は貴族ですが、幼い頃に仏門に入ったので、もう関わりは…」
「それでも、待遇が違うだろ?」
何か、怒っているように感じて震えた。
座っていた旅人が腰を上げて、近づいてくる。
逃げる場所もないのに、逃げたい気持ちでいっぱいになった僧は、動かない体を縮めた。
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