旅人×美坊主

9/15
前へ
/15ページ
次へ
 初めて旅人を見た時から、妙に引きつけられていた。  均整の取れた綺麗な体に、端正な顔立ち。笑ったら、少し子供っぽかった。  ダメだ、考えては目が覚める。  僧は強く瞳を閉じて眠ろうと努力した。  だが不意に、旅人の方が動きを見せた。 「!」  抱きしめるように前に回っていた手が、不意に僧の滑らかな肌を撫でた。  それにゾワリと粟立つ。  一気に心臓が早鐘を打った。  そして必死に、声を殺した。  男の手はまるで遊ぶように僧の体を撫でる。  胸を、鎖骨を、わき腹を。  まるで弱い場所を探る様に、節くれてごつごつした手で触れるのだ。  僧は必死だった。  一つでも声が出れば、止められなくなる。  そうなれば、きっと手遊びのような戯れが本格的なものになる。  この旅人に本気で迫られたら、逃げられない。  腕力の問題だけではない。溺れてしまいそうだ。  その間にも、脇の辺りにあった手が、臍の周りを撫でて、ゆっくりと、更に下へと延びていく。 「っ!」  撫でられるだけだった。だが、確実に体は熱くなっていく。  声を殺しきれなくて、僧は自らの腕を噛んだ。  そうでもしないとみっともなく崩れ落ちる。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加