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初めて旅人を見た時から、妙に引きつけられていた。
均整の取れた綺麗な体に、端正な顔立ち。笑ったら、少し子供っぽかった。
ダメだ、考えては目が覚める。
僧は強く瞳を閉じて眠ろうと努力した。
だが不意に、旅人の方が動きを見せた。
「!」
抱きしめるように前に回っていた手が、不意に僧の滑らかな肌を撫でた。
それにゾワリと粟立つ。
一気に心臓が早鐘を打った。
そして必死に、声を殺した。
男の手はまるで遊ぶように僧の体を撫でる。
胸を、鎖骨を、わき腹を。
まるで弱い場所を探る様に、節くれてごつごつした手で触れるのだ。
僧は必死だった。
一つでも声が出れば、止められなくなる。
そうなれば、きっと手遊びのような戯れが本格的なものになる。
この旅人に本気で迫られたら、逃げられない。
腕力の問題だけではない。溺れてしまいそうだ。
その間にも、脇の辺りにあった手が、臍の周りを撫でて、ゆっくりと、更に下へと延びていく。
「っ!」
撫でられるだけだった。だが、確実に体は熱くなっていく。
声を殺しきれなくて、僧は自らの腕を噛んだ。
そうでもしないとみっともなく崩れ落ちる。
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