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木陰から木陰へ。
梢から梢へ。
まるでムササビのように、ひとつの人影が移動していく。
普通なら、体重で木の枝が折れて落ちるだろうと思われる移動方法だが、その人物は難なく飛び移る。
たまに、めりっと軋(きし)む梢があっても、あわてず身をひねって違う枝をつかみ、折れてしまう前に手を離す。
離された梢は、反動でガサガサと大きな音をたててもよさそうだが、不思議と風に吹かれたくらいのゆらめきでおさまっている。
そのまま梢を伝って、その人物は、とある高い壁を飛び越えた。
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