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「警備の兵はいないのか?」 壁の内側で、やはり木の上に身を隠しながら、そんなつぶやきをもらす。 不審そうに背後の森と、今いる場所を見まわした。 せっかく、へだてるための壁があるのに、外と内側の木の枝が仲良く触れあっている。 さも、ここから伝って中にはいってください、と言わんばかりに。 ーー警備がずぼらすぎるんじゃないか? 呆れる。 「ま、楽にはいれたから、オレはいいけどな」 そう言うと、視線を巡らせて、己の進むべき方向を探る。 木の上から見おろす地面は、満月に明々と照らされているが、木の根元には底が抜け落ちたような闇が残されている。 その闇は、途切れることなく奥まで続いている。 「うまいこと暗がりがあって歩くのは楽だけど……いいのか、これ」 木の梢から、物陰になって光のあたらない根元へとおりてみる。 靴に触れる芝は綺麗に刈られているし、枝葉が落ちていたりもしない、なめらかな地面。
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