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彼は、盗賊だ。 盗みにはいると、見せかけに惑わされることなく、かならず一番貴重で大切なものを盗む。 それはまるで、王の頭上から冠をかすめ盗るが如き手腕であり、いつしか彼についた通り名は『クラウン』という。 今日この夜、彼はこの宮殿で一番いいものを盗むつもりで、この場に現れたのだ。 ーーせっかくだから、質のいいお宝が手にはいることを願おう。 ここは、盗みにはいる場所として、世界最高峰である。 中途半端なものは、望まない。 最高の品質のものがあるに違いない。 にやり、と笑いながら、心の中でそうつぶやいて、クラウンは身軽に闇を移動していった。
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