第一章 いちにちめ

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その翌日、眠い目をこすりながら僕は一時限目の授業に出るためバスに揺られながら大学へ向かう。 僕の通う大学は有名ではないが、恐らく全国を探してもそこそこ珍しいであろう特色がある。 それが… 「何ブツブツ言ってるんだ城井? 寝ぼけてるのか?」 おっと。言おうとしたら横槍を入れられてしまった。 今更だけれど僕の名前は城井歩。城井と書いて”きい”と読む。 どうせみんなしろいとか読んでるんだけれど正直どうでもいい。 「なんだいたんだ波川 また遅刻かと思ってた」 今話しかけてきたそこそこ筋肉質の男は波川悠一。 去年大学に入学した僕の最初の友人だ。まぁ後は友人とは言えない人ばかりだし唯一の友人と言っても過言ではないけど。 「いや、別に毎回遅刻しているわけでは…」 視線をそらし、やや焦り気味に答える波川。 いや…あんた去年出席日数足りてなくて単位落としたって言ってたよね? 「まあ僕としては君が卒業できようができまいがどうでもいいけど」 うちのお父様は『友達は選んでおけ』と言っていた。 話を聞いてみると、どうやら僕くらいの時に借りた金を返さない人や万引きの常習犯が友人だったことがあるそうな。 …うん。波川がそうだとは言わないけれど肝に銘じておこう。 べ、別に波川がそうだとは言ってないんだからね!! 「何か変な視線を感じるが…まあいい それより城井」 「ん? 急に改まってどうした?」 何故か震えていた波川が目の色を変えて僕の前にずいと躍り出る。 …顔が近い。つか青のり前歯についてんだけど…歯磨け。 朝っぱらだというのに見る見るうちにテンションが上がっていく波川を見て、僕は彼が話そうとしていることを推測してみた。 恐らくそれは今さっき心の中で独り言ちようとしていたことと同じなのだろう。 何故かと言われればうちの特色とは思春期勘違い系男子が興奮するものだからだ。 波川は僕の返しを聞くと『待ってました』と言うかのように答える。 「今年の”編入生”可愛い子いっぱいだといいな!」
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