第一章 いちにちめ

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”大学特別編入制度”。文字にするとさっぱり分からないが、早い話うちの付属高校の生徒が卒業後この大学に編入することを条件に特別に大学に編入することができる制度だ。 この制度中に取った単位は後々大学卒業単位として認められるので、周りよりも早く卒業することもできるのである。 とはいえ高校の勉強を疎かにするのは当然ダメであり、制度を用いるためにはある程度の成績の他に学習態度や課外活動なども問われるらしい。 僕は付属校から入ってきたわけではないので、授業中制服の集団に会った時は声には出さずとも結構驚いた記憶がある。 『あれ? 僕高校と大学の校舎間違えた?』と心配になったのは秘密だ。 さて、今まで聞いて来ただけでは何故思春期勘違い系男子が興奮するのかはいまいち分からないだろう。 実際僕も波川から聞かされるまでよく分からなかった。…聞いても納得はできないけど。 で、波川が興奮している理由…それは”編入制度を利用する生徒はほとんど女子生徒だけ”ということだそうだ。 彼曰く『男どもは態々高校校舎から離れた場所に来てまで勉強したくはないだろうし、あと留学も関係してるんじゃないか?』ということらしい。 要するに女の子は勉強が好きってこと? 絶対違うだろうね。正直理由ははっきりしないけれどこの制度を利用するのは真面目で勤勉な大多数の女の子か少数の男の子のようだ。 「高校生が授業に参加しようが波川に関係ないと思うけど?」 鼻歌を歌い周りの乗客から冷たい目で見られている波川に前々から思っていたことを呟く。 恐らく波川達が期待しているのは”若くて可愛い彼女”を作ることなのだろう。 そんなのは同じ学生を探せばいいだろうし、そもそも彼女たちは勉強しに来ているのだから恋愛ごとを考えているとは思えない。 そんなことを思いながら波川の反応を待つと、彼は人差し指を僕の方に向け軽く振る。 ええと…『キレてないっすよ?』 うん。絶対違うだろうね。 「ちっちっち それは早計だぜ? いくら勤勉だって女の子は女の子 更にああいう年頃の子は同年代じゃなく年上の男を好むんだよ」
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