第一章 いちにちめ

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…年上男性が好みなら1つや2つしか変わらない大学生よりもっと年上を狙うのではないの? 流石に教授たちはないと思うけれど…まあ、何であれ波川を好きになる奇特な人はまずここに来ないんじゃない? 「じゃあ聞くけど 去年ここに来た高校生のうち何人知り合えた? 誰か友達になった?」 「う…!?」 僕の我ながら意地悪な問いに波川は『痛いところを突かれた』と言わんばかりの顔をする。 ほら、やっぱり無駄じゃん。 波川を言い負かし気分がよくなった僕は学校近くの駅(バスの終点だ)に近づいていくのを車窓から見つつ…ため息を吐いた。 ああ、ゲームしたい。 昨日はあれからほとんど1日中眠って親父様に叩き起こされるまで惰眠をむさぼっていたが、今日からは何かしら新しい趣味を探さないといけない。 決して父親に屈したわけでは当然ない。 漫画やゲームを百害あって一利なしというように完全に貶されたことを僕は一生忘れないだろうし、『それならお前もタバコやめろバーカ』と言って思いっきりしばかれたのも…おっと、話が逸れた。 僕がおっさんの言葉に素直に従うことにしたのは弟のことと少し関係がある…まあ情けない話だからここでは何も言わないけど。 そんなことを考えているうちに僕達は終着駅に着いた。 ここから徒歩で10分ほど歩くとようやく大学に到着するのだ。 「ほら、波川 落ち込んでないで早く行くよ 大丈夫 新たな友達はきっとできる」 「…おう、そうだよな まだあきらめるには早いよな」 このまま座り込んでいたら運転手さんに怒られると気付いた僕は心の底から思ってもいない言葉で励まし、外へ向かわせる。 友達か…。僕も大学で新しい友達作らないと妹弟にまた嘲笑されそうだしな。 はあ、前途多難で憂鬱だな…。 「ほら、立ち止まってないで早く行くぞ城井!」 「ん、そうだね」 『うっせえ童貞野郎!』と言ってやりたかったが、よく考えるまでもなく僕も童貞野郎だ。 ていうか何で童貞って悪いことなのかねえ。生物的には悪いことは間違いないけれど、モテないんだからしょうがないじゃんと声を大にして言いたい。 思考が横道にそれながらも足は大学へ向かって行くのであった。 「女の子…ね」
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