第一章 いちにちめ

5/15
前へ
/87ページ
次へ
五分後僕と波川は創立20数年しかない新設校の”西大崎大学”にたどり着いた。 さっきも言ったが西大崎大学は全国でも珍しい特色を持っており、さっき言った他にも試験的に色々なことを行っている。 例えば簡単なところから言えば文化祭を高校生・大学生共同で行ったり、オープンキャンパスだって年に数度ではなく、志望者がくれば毎度毎度行おうとする力の入れようだ。 僕としてはそんな試験的なことを何度も行われてはいつか経営破綻でここが潰れてしまうのではないかと僅かながら心配しているのだが、幸い今のところそのようなことはないようだ。 不満があるとすれば通学時間帯が高校生と丸被りしてしまうことだろうか…。 何でって? そりゃさっきのバスの高校生率が7割を越えたらそう思うでしょ? コミュ力がある人なら積極的に話しかけるのかな? いや、それただの不審者だろ。 「ほら、さっさと行くぞ城井 席が埋まりかねん」 「え? 一時限目って必修科目だったし、編入の子いないはずだけど?」 さっきの説明を捕捉すると、編入制度を使って編入する生徒は希望する講義のみ授業を公欠する…ということは時間割上不可能なので講義を希望する生徒は原則その日は授業全て公欠とする。 生徒が受けることができるのは必修科目を除く”全て”の講義だ。 そのため僕達学生も学年関係なしに時間割の赴くがまま講義を受けれるのだ。 …講義名の横に”原則三回生から”と書かれていたりすると一回生・二回生のものよりは単位が取りにくくなっていたりするのは仕方ないことなんだ、うん。 編入制度の説明を覚えられるほどこの男に聞かされたから間違いはないんだけど…。 普通必修科目だったら席が足りなくなるなんてことはないよね? 僕が考え込んでいると、波川はじれったそうかつ嬉しそうに口を出してきた。 「あるだろ! 今日は編入体験講義だ 今日だけはどの授業にも高校生が来るんだぜ」 『ま、男も来るんだけどな…はあ』と微妙にテンションを落として呟く。 …あー。そういえばそうだった。 波川の言う通り、今日は高校生全員は授業の代わりに大学の講義の見学を強制されて、その後レポートを書かされるようだ。 僕らからすれば見学のため席は埋まるし、トラウマがぶり返すし散々なんだけど…。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加