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私はすかさず膝を上げると、乱れる裾に構わず、脱兎の勢いで駆けだした。
その後ろで、バキャッ!! という鈍い音が響き、粘性のある液体があふれだす音が続く。
さらに運の悪いことに、その音は私の後ろを追いかけてくる。
私は常の無表情のまま、舌打ちしたい衝動に駆られた。
チラリと背後を振り返ると、案の定、御師様の部屋で見たあいつが私の後ろをのた打ち回りながらついてきている。
「何のさわ……って!」
今度はしっかりと舌打ちをしながら首を前へ戻す。
その時、幸か不幸か、廊下の角から知り合いが姿を現した。
「胡蝶ちゃん、後ろの何っ!?」
綺麗にくしけずられた茶色の髪に、ラフなTシャツとジーンズ姿。
禿一派が同門、マヤちゃんである。
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