第1章

15/67
前へ
/89ページ
次へ
私にゆっくりと近づいてくる。 それだけ、なのに多く感じるのが恐ろしいところ。 そして、私の顎を持ち上げる高砂先輩。 目には、怪しい光が光っているように見えた。 額に汗が滲む。 しかし、ここで負けるわけにはいかない。 あくまでも、冷静を装う。 「やめていただけませんか?高砂先輩。」 そう言って、にらみつけてもやめない。 「冷静だね。俺にこんなことされて、倒れない女子は結季ぐらいだよ。」 また下の名前で呼ばれた。 しかも、高砂先輩は私のこと呼び捨てだ。 「こんなことしても、私は落とせないですよ。先輩?」 負けるかと、先輩に嫌味をお見舞いする。 「そう、みたいだね。困ったな。落とせると思ったんだけど。」 でも、先輩に変化なし。 落そうとも思っていないのに、よくいうものだ。 「そこらの女子と一緒にしないでください。」 先輩と近距離のにらみ合いが続く。 そして、その均衡は破られた。 「あっ、結季っ!」 聞き覚えのある男性の声。 「えっ?あっ、真?どうしたの?」 真は私の手を引き、先輩から離した。 先輩は邪魔をされ、苛立っているのがわかる。 「誰だよ、お前ら。結季に何してんだ。」 「真、落ち着きなさいよ。」 「結季!?お前、こいつに今何かされそうになってたじゃないか。」 「冗談に決まってるじゃない。とにかく、落ち着きなさいって言ってるじゃないの。」 しつこく言われたため、冷静さを取り戻す真。 「わ、わかったよ。お前がそういうなら。」
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加