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「そこまでいくと野心、野望に近いけどなぁ」
「もぉ!みんな、ただ、幸せになりたいだけなの…それだけなの…。私も…きっとずっと、そう願ってただけ…」
しばらく、トシコは外の景色を見ながら、瞳に涙を滲ませていた。
あえて、俺は何も声を掛けてやらなかった。
車を走らせ、そのお婆さんの家に到着。
さっそく、家族の案内でお婆さんの部屋に通される。
「こんにちわぁ」
このお婆さんは、お爺さんが、まだ死んで間もないそうで。
心が落ち着かないからって、最近じゃあ、ほとんど外出をしなくなったそうだ。
寂しいけど、二人の思い出の量は半端ないくらい、誰にも測れない程の大きいモノなんだろう。
それを今はここで、この小さい身体の中に、グッと詰め込んで、締まっている。
トシコは俺の指示通りに、ひたすら準備。
「仲が良ろしいなぁ。お二人さんはご夫婦ですかなぁ?」
「はい、もうすぐ☆」
「そうじゃったかい」
「いいえ、まだです」
俺は冷静に真面目に答えてやる。
「ちょっと、こちら照れてるんで、すいません」
「……」
トシコはまた、一言余計な言葉で話を繋げる。
「ええことですよぉ、夫婦になるという事わぁ」
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