と言う訳で出会った時の事

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 ペコリと頭を下げる叶さんに此方も会釈する。  聖ヘスティア女学院は容姿に気を使う、もしくは自信を持つ者が大半だと聞く。  だが彼女は黒髪は乱れ、白い肌も荒れ、どうやら相当精神的に追いつめられてるようだ。  ちなみに部屋に入って5分は経過したが全く歌わない。  話しに来たのだから当然と言えば当然だが。  それから更に5分程経ったが、その間に毎日同じ悪夢を見る事や、写真を撮ると叶さんの周りが必ずぼやける事、部屋に帰ると途端に具合が悪くなる事、叶さんと接した人達が皆ひどい頭痛がする事などを聞き出した。  ちなみに悪夢の内容は、一面の花畑で誰かが叶さんを呼んでるらしい。  声の主を探してもどこにもおらず、暫くしてふと後ろを向けば花が全て知人の死体に変わっており、悲鳴をあげて目を覚ますとか。  正直、叶さんの説明が随分と分かりにくかったが、それは良しとしよう。  その後、叶さんが夢の内容を説明する際に『誰も』でなく『どこにも』と言った部分から半ば無理矢理に声の主に心当たりが有る事を白状させた。  実はただの勘だった事は秘密だ。 「梓ちゃんは、恋人っている?」 「……いますが」  そして今日、其奴にすっぽかされましたが。 「……その声、3ヶ月前に死んだわたしの元恋人の声に、そっくり、なの」  ふむ、叶さんの恋愛事情も複雑なようだ。  自分もそろそろ別れようか? 「ちなみに……その、恋人って」 「いや、見えてたので説明は良い」 「あ、ありがとう」  叶さんの恋人とは叶さんと同じ聖ヘスティア女学院の制服を着た少女の事。  つまり、叶さんは同性愛者という事になる。 「元恋人という事だが、それは死んだ事で? それとも別れたんですか?」 「別れました。わたしから。それで、妙(たえ)ちゃんが家で首を吊ったって」  そう言って叶さんは大きくプルリと身震いする。  表情から察するに、罪悪感が大きいようだ。  当たり前か。 「では、現在別の方と付き合ってますか?」 「はい」  嫉妬、か?  その元恋人とやらが叶さんに憑いてる理由が嫉妬なら、自分流の交渉重視のやり方では難しいかもしれん。  だが、やるしか無いだろう。  自分は出来るだけ真っ直ぐ叶さんの目を見る。  真面目な空気を感じ取ったのか、叶さんは少々体を強張らせる。 「今から、その霊を此処に呼ぶ。成仏するよう、交渉してみる」
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