第1香 トップノート 5st.

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「香料がはじめて登場する古代メソポタミアでは、レバノンセダーの香りを神々に捧げていたんだ。ちなみにくさび形文字の『レバノン』は、香りを意味する。宗教と結びついた香りの文化は、西洋には香水の液体の文化として、東洋にはお香の個体の文化として伝播して行ったのさ」 「西には香水で、東にはお香の文化か。そう言うと、ホントに不思議だよ」 「お香と香水の違いは、肌につけてから香りのグラデーションが変化することだね」 「香りのグラデーション?」 「揮発する匂い分子は、時間経過と共に変化するんだよ。まず最初に香るのがトップノート、次に香りの中心であるミドルノート、最後にラストノートが香りの余韻を飾るのさ」 「あのう……ノートって何?」 「ノートは元々は音楽用語で、詩の調べや旋律の意味だね。香りでノートというのは香調を意味して、香りの組み合わせでどんな香りかイメージするためのモノさ。例えばフローラルノートは、ジャスミン、スズラン、ローズ、バイオレット、ミモザの甘く華やかな香調だね」
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