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「香りを識別する聞香の席で、香りに一定のルールやテーマを設けたのが組香と呼ばれるものだよ。例えば歳事なら『星合香』とか、文学なら『源氏香』が有名だね。『源氏香』の組香は、ニューヨークの国連本部で香席が実演されて、日本の香り文化として世界的に大きな反響を呼んだのさ」
「そんなに!」
茶道や華道は有名だけど、香道は知らなかった。そんなに奥の深い文化があるのに、最新の技術に躍起になってそれを知らないのは、日本人として恥ずかしいことだと思った。
「西洋の香り文化は香水を吹くだけで動作を終わるけど、日本のお香は器に香を入れ、火を点けて香煙が焚かれ、やがて時が経ち煙が消えて香りが空間に残る。その一連のプロセスが癒やしとなり、瞑想に繋がると外国人は指摘しているね」
「たしかにお香をすると、何だか気分が落ち着くよね」
ハチの説明は知らないことばかりで聞いていて楽しいが、それ以上に陽光が満たすこの屋上が、居心地が良くホンワカとして好きだ。幸福のロールケーキを切ったら、こんな色彩の断面かもしれない。
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