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「死にたくなるほど辛いことがあったんですね? でも、あなたが死んだら悲しむ人がいるはずです。カモミールの花言葉を知っていますか?」
「なん……ですか?」
「花言葉は『逆境に負けない強さ』です」
きっとカモミールの香りが、女の人をやさしく包むように香っているのだろう。
女の人の表情が緩み、たまらずに泣き出した。周りの野次馬から、不満と失望の声が漏れる。
自殺を諦めた女の人が男の人に一歩近づいた時、恐怖からの開放でバランスを崩して、ずるりと足を滑らせた。
「あぶないっ!」
男の人が女の人を庇うように、一緒に宙を跳んだ。
「うわぁ!?」
「あ」の母音を呑む間もなく、二人は地上に落ちた。わたしは二人が落ちた地上に、恐る恐る視線を移した。そこには──
フンワリしたマシュマロのような、大きな救助マットがそこにはあった。マンションから落ちた二人は、マットに落ちて助かっていたのだ。
野次馬の歓声は、失望と落胆の吐息にかわって引いた。無慈悲な野次馬は無視して、二人が無事でわたしは安堵のため息を漏らした。
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