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「どうですか?」
射手座理事長が尋ねた。
「助手の見習いって、何をすればいいのかわからなくて」
「いいえ。八分儀君をどう思いますか?」
「やさしい……先生だと思いますが」
わたしは正直に答えた。射手座理事長の瞳が哀色に染まった。
「八分儀君はやさしい性格です。でも、自らの生命を投げ出して人を救う、そんな向こう見ずな面があります」
「……実は投身自殺する女性を助けようとして、一緒に飛び降りたのを見ました」
「そうでしたか……やはり八分儀君は過去を、あの事件を引きずっているのですね」
射手座理事長が嘆息した。
「あの事件って……ハチの過去に何かあったのすか?」
「わたしはこの学園の理事長をしていますが、かつては八分儀家に仕える従者だったんですよ」
「ジュウシャ?」
「八分儀家と主従の関係を結んだ、主君と運命を共にする者です」
誇らしく言った。
「わたしの家は代々、御門一族に仕えていたのです。わたしは学園の理事をしながら、八分儀君の母君である薫様の従者として仕えていました。薫様は美しい御方でした……」
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