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安堵した表情の男の人を追って、わたしは走り寄った。
「先生……八分儀カオル先生ですよね?」
わたしは訊いた。目の前の男の人は、わたしが通う学園の先生だからだ。でも学年が違うから、今まで話したことはなかった。
「そうだけど、君は?」
そう尋ねる八分儀先生は、ちょっと頼りないカンジで放って置けないタイプだ。わたしのショートボブと違って長い亜麻色の髪を結んで、やさしい笑顔とメガネそれに白衣が似合う先生なのだ。
しかしその屈託のない笑顔を見て、わたしの感情の堤が崩れて爆発した。
「バカッ! バカ、バカ、バカッ──!!」
八分儀先生がキョトンとした表情で、「ごめんなさい」とすまなそうに謝った。
やってしまった、先生に向かって罵詈雑言を浴びせてしまった。学園では頼りないカンジだけど、それが逆に母性本能をくすぐり女子には人気があるのだ。
だけど、あんな大胆なコトをするタイプには見えなかった。それにもまして、命を粗末にする人を許せなかったのだ。
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