第1章

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「・・・今夜も、まずまずだな。」 青年は、ほくほくとした面持ちで、地面のコインを拾い集める。 「ああ!」 見物人が波の引いたように去った、その場に。 取り残されたように佇む、一人の少女。 「有り難う!君の御蔭で、興業が打てたよ!」 その少女を見付けると、青年は嬉々として駆け寄り 「肝心要なマッチを忘れるなんて、とんだ大ドジだよね。ははは。・・・じゃあ、今、マッチの代金を・・・」 拾ったコインの一枚を、少女に差し出す。 が。 「・・・どうしたの?」 少女は目を真ん丸に見開いたまま、動こうともしない。 やがて。 「・・・すごい。」 少女は、ぽつりと呟いた。 「え?」 「すごい!すごいわ!さっきの、何!?魔法!?あなた、魔法使い!?」 「あ?え?ち、ちょっと、あの・・・」 青年の手を取ってはしゃぎ回る少女。 戸惑う青年。 「ま、魔法じゃないよ。これは幻燈と言って、中に灯した蝋燭の灯りで・・・」 「とにかく、すごいわ!いい物見ちゃった!」 難しい説明は、あまり理解されなかったらしい。 青年は頬を染めつつ、頭を掻くばかりだった。
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