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「と、とにかく、さ!」
青年は、少女にコインを押し付けた。
「マッチの代金!受け取ってよ!」
しかし。
「ううん!いらない!」
「な、何で!?」
「だって私、すごい物見せてもらっちゃったもの!あのマッチは、見物代!」
「だ、だって、あのマッチが無ければ、僕だって興業が打てなかったんだし!」
「いいの、いいの!マッチ一つであんな素敵な物見せてもらったなんて、返って得した気分!逆に、悪いわ!」
「い、いや、だって・・・!」
少女は、コインを受け取ろうとはしなかった。
だが。
「・・・あ、でも・・・」
急に、少女は顔を曇らせた。
「今日は他に一つも売れなかったから・・・お父さんのお酒、買えないなぁ・・・」
「お酒?お父さんの?」
青年は、その言葉を聞きとがめた。
「うん。お家で待ってる、お父さん。そろそろ、買い置きのお酒も無くなっている頃だと思うから・・・」
「ちょ、ちょっと待って!?」
「え?何?」
「君のお父さんは、こんな寒空の下で君を働かせておいて、自分は家でお酒を飲んでるって言うの!?」
青年の胸に、熱い怒りが湧き上がって来た。
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