第1章

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「と、とにかく、さ!」 青年は、少女にコインを押し付けた。 「マッチの代金!受け取ってよ!」 しかし。 「ううん!いらない!」 「な、何で!?」 「だって私、すごい物見せてもらっちゃったもの!あのマッチは、見物代!」 「だ、だって、あのマッチが無ければ、僕だって興業が打てなかったんだし!」 「いいの、いいの!マッチ一つであんな素敵な物見せてもらったなんて、返って得した気分!逆に、悪いわ!」 「い、いや、だって・・・!」 少女は、コインを受け取ろうとはしなかった。 だが。 「・・・あ、でも・・・」 急に、少女は顔を曇らせた。 「今日は他に一つも売れなかったから・・・お父さんのお酒、買えないなぁ・・・」 「お酒?お父さんの?」 青年は、その言葉を聞きとがめた。 「うん。お家で待ってる、お父さん。そろそろ、買い置きのお酒も無くなっている頃だと思うから・・・」 「ちょ、ちょっと待って!?」 「え?何?」 「君のお父さんは、こんな寒空の下で君を働かせておいて、自分は家でお酒を飲んでるって言うの!?」 青年の胸に、熱い怒りが湧き上がって来た。
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