0人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・仕方ないの。」
少女は、俯いて小さく笑った。
「し、仕方なくなんて無い!お父さんは!お父さんは・・・!」
青年の脳裡に、自分の父であり”師”でもあった男の顔が浮かぶ。
「お母さんが病気で死んじゃって・・・お父さん、まだ立ち直ってないから・・・」
彼の父親も、最愛の妻を失った、その失意で”筆を折り”。
生涯、”キャンパスに向かう事は無かった”。
『お前・・・』
その、父が。
認めてもらいたい一心で。
それにより、父もまた、再び絵筆を握ってくれることを期待して。
彼が必死に勉強した絵画を。
その作品を。
一目見て言った、遺言となった、言葉。
『画家の道は、諦めろ。』
何故、と問い詰める彼に、父は。
『お前の絵は、単なる事実の模写だ。感動が無い。こればかりは、センスの問題だ。お前には・・・画家の才能は、無い。』
「・・・それで、ね?」
少女の声に、青年が我に返った。
「私が、死んだお母さんにそっくりだから・・・お父さん、余計に辛いんだと思うの・・・だから、私はお外に・・・」
「・・・お母さんに、似てる?」
青年の頭に、閃く物があった。
最初のコメントを投稿しよう!