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「・・・で、髪型は?」
「ええと・・・」
青年の問いに、少女は顎に指を当てて、周囲をきょろきょろと見渡し
「あ、あれ!あの人と同じ!」
道行く一人の婦人を示した。
「うん。」
青年は、薄く小さな紙に、筆を滑らせた。
『父さん。』
そして、その、少女の”顔”を模写した”絵”を仕上げながら。
『確かに僕には、画家の才能は、無かったかも知れません。』
心の中で。
『だけど、それでも・・・そればかり続けて来て、他に何も出来ない僕は・・・僕の絵で・・・誰かを感動させたかった。誰かに・・・』
亡き父に。
『笑って欲しかったんです。』
語り掛けていた。
『それが、今・・・』
そして。
『この時なのかも知れません!』
絵が、完成した。
「どうだい?」
その絵を、少女に示す。
すると。
「・・・!」
少女は、息を呑んだ。
「・・・おかあさん・・・」
「似てるかい?」
「似てるなんてものじゃないわ!お母さん!これ、お母さんよ!」
「そうかい。」
その少女の反応に満足した彼は。
「で、君の家は、何処?」
少女に、そう尋ねた。
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