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貿易都市トファス。近隣諸国から様々な物資が流れ込んでくるため、ある意味でどの国よりも潤っている都市である。中立を保ち、どの国にも平等に取引をしている。
昔はこの都市を巡り戦争が幾度も勃発していたらしいが、今では中立の一都市として君臨している。
この都市に来るのは二回目になる。
ディンス・イーリスは少し元気を失った市場の中をゆっくりと歩いていた。
ちょうど五ヶ月前、この街を中心になにか大きな事件が起きたらしい。それの復旧であまり活気どころか、街全体で疲れた空気が漂っていた。
ディンスは嘆息しながら、人々の様子を観察した。
彼は繁華街へとやってきた。そろそろ昼時だ。どこかでゆっくりと上手い物を食べるのもいいだろう。
そう思い、視線を巡らせながら店を探した。
さすがに繁華街は活気がまだあった。
呼び子の看板娘が店前で声を張り上げている。と、通りのはずれで一人の娘が狼狽しているのが見えた。身なりからして旅人のように見える。外套の下に見えるのは法衣のようである。となると術師なのだろうか。
娘は道行く人々をキョロキョロと見回している。連れのものとはぐれてしまったのだろうか?
と、そこへ二人の男が近寄っていくのが見えた。何処に行っても軟派な男というのはいるものだ。それも悪意を持って接していく者は何処へ行っても質が悪い。
あまり目立ちはしたくはないが、どうも性分なのだろう。ディンスは音もなくその娘の方に近付いていった。
人混みをすり抜けるように歩き、男達よりも早く娘に近付いた。
「すみません。いいですか?」
「は、はい?」
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