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急に声を掛けられ娘は驚いたのだろう。目を大きく開きながらディンスを見た。
見れば、それなりに綺麗な娘だ。どこかのお嬢様のように品がどことなくある。着飾って出歩けば通行人の何人かの目にはとまるだろう。そのような娘が旅装束を身にしているのはどことなく気になる。
「こんなことを言うと変かもしれませんが、貴女の近くに男が二人近寄ってきてますよ」
「え」
「まぁ、恐らく軟派目的でしょうがね」
「あの………そう言う貴方は?」
「………怪しいですか?」
「はい」
どうやら話し掛けるタイミングが悪かったらしい。
と、そこへ助け船ならぬ、バカがやってきた。
「おい、にぃちゃん。どいてくれねぇか?」
「俺達、その子に用があるんだけどさ」
その言葉に娘は息をのんだ。恐怖にではない。その低脳な言いように呆れたのである。そして、横目でディンスを見る。
ディンスもこうもあからさまに相手が言ってくると思っていなかったので、ため息をついている。
「こんな優男なんかほっといて、俺達とどっかいかねぇか? 案内してやるよ」
「面白い所結構知ってるんだぜ。な?」
娘は大きくため息をついた。
「私はシャーラです。貴方は?」
「ディンスといいます」
「では、ディンスさん行きますか」
シャーラという娘は二人の男を無視して、そのまま歩き出してしまった。なかなか肝の据わった娘だ。先程までのおろおろした感じが微塵にも見えない。
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