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私の放った術は男に直撃する寸前でかき消されてしまった。一体なにが起きたのか理解できない。
「やったね、あんた!」
鋭い女性の声が轟いた。最後尾にいたその女性は一気に跳躍し、私に向かってきた。
いままで経験したことがないほどの速度で私に迫り来る。その中で、何かを彼女は投擲したのを感じた。しかし、それがとても小さいのかよく分からない。
私は素早く横に移動しながら、対抗の術を形成させる。しかし、そこに突風が吹き荒れる。投擲された物が、まるで意志を持ったかのように私に接敵してきた。
次の瞬間それは熱波へと代わり私を襲った。
「っ………あっく!?」
一体、なにがどうなって熱波に変わったのか何も分からない。さらに、その両脇から私を取り囲むように殺意を抱いた荒れ狂う風が襲いかかってくる。
対抗の防御壁を形成させるが、とても耐えれそうにない。瞬時に理解した私は飛び退き、次に備えようと女性を捜す。しかし、正面にいたはずの彼女はいない。霞に隠れてしまったかのように探知できない。
私はパニックになりかけた。が、迫り来る敵意に残っていた生存本能が動いた。風を使い飛翔。すると私の脇から一筋の鎌鼬が通り過ぎていった。
「やるじゃん」
声の主は彼女に間違いないはずだ。次第に繰り出される攻撃から敵意が薄れていく。が、どれも手加減されているとは思えないほど強力だ。
「ッ!!!」
私は炎を繰り出しそれを分散させた。同時に地に力を送り、彼女が通りそうなルートを隆起させた。
「わわっ!?」
完全に不意打ちとなったのだろう。彼女の動きが若干緩まった。その隙を逃がすわけにはいかない。私は逃がすまいと一気に距離を詰めた。
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