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「残念。詰めが甘いよ」
そう聞こえた瞬間、私の足下から爆炎が上がった。何も察知することが出来なかった。精霊の動きも呪も何も作動しているようには感じられなかった。なのに………
私は吹き飛ばされ、何とか着地だけは出来た。しかし、もうその時には彼女は私のすぐ後ろに立っていた。
「チェック。 ………なかなか楽しめたよ。レイルの弟子か何かかな?」
「い、今のは何ですか?」
「ただの火薬玉だよ。その様子を見ると本当に盲目みたいね。やってて、薄々は分かってたけどね」
「………火薬玉?」
なるほど、目の見えない私には察知すること出来ないはずだ。意志を持たない物の動きまで私は正確に把握することはまだ難しい。
「それにしても、貴女大したもんね。一種の天才って奴かな?」
カラカラと明るくしゃべる女性だ。しかし、この女性は本当に人間だろうか? どうも獣の臭いを強く感じる。
「へぇ、そんなことも分かるんだ」
心を読まれた!?
「そうだよ。私は半獣人なんだ。途中で気配が変わったの分かったかな」
女性は笑いながら言い、膝をついていた私を立たせてくれた。
「おい、フィー。いい加減にしとけよ」
この声は私が最初に攻撃を仕掛けてしまった男のものだ。
「はいはい、わかったよ」
「でよ、お嬢さん。レイル・D・ディーネのところに案内してほしいんだけどよ」
少し軽薄そうな口調で男はマスターの名前を言った。しかし、それはわざとしているのだろうか? 男からは軽薄そうな感じは読み取ることが出来ない。
「案内させずとも、すでにここにいる」
マスターの声だ。それも私の後ろから………
「おいおい、弟子がやられてるのに高みの見物かい?」
「………この子にはいい勉強になっただろう。上には上がいる。それもこの世で頂点に近い人間との戦いだ。経験を積ませるにはいいだろう」
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