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「鬼か、てめぇは」
「バサラ。いや、ルイ・クロスター。現世で会うのは初めてだな」
「そっちはあんま変わってねぇな」
ルイという男はあんまという語尾を強く言った。
「それを言うのなら、ボード以外はみんな初対面でしょうが」
私の相手をしていたフィーという女性が呆れながらそう言った。
「全くだ。しかし、お前達の噂は色々とよく聞いたがな。とくに、フィー・フューリー」
「な、なによ」
「よく温泉街や、下町の酒場を荒らし尽くす鬼女だとな」
「あ~あ、やっぱあれって噂になってたんだ」
この声はルイのものだ。
「フェイク・リーから聞いている」
「あの野郎………今度会ったらただじゃおかねぇ。まぁ、世捨て人のあんたが下界の苦しみを理解するなんてないか」
フィーが怨念がこもったような、脱力しかかったような微妙な声を発する。
「すでにそういう感覚は失せている。あるのはただの怨念だけだ」
「そりゃ、俺達にも当てはまる話だ。俺達は生きてはいるが亡者と同
じようなもんだ。もっとも、まだ人間性という物は失っちゃいないがな」
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