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一本取られた、というようにうわあああ、と頭を抱える蒼輝。上から落っこちてこちらに迫りくるチーターの大群。そして呆然とそれらを眺める私。
「あれ……これもしかしてカオス……」
そう呟いた瞬間、チーターに踏み潰された私と蒼輝の意識はほぼ同時のタイミングで暗転したのだった。
*
「知らない天井だ……」
まるで浮いているかのような不思議な感覚に気付き、辺りを見回す。隣で蒼輝が横になっていたのを確認すると、私は動ける事を確認し、優しく彼を起こすべく移動して四の地固めを繰り出した。ミシミシと音が鳴っているがここは気にしない。
「ソウチャンオキテッアサダヨー!」
「いだっいだだだだ!!なんで寝起き早々四の地固めされてんの俺っ、つーかよくある幼馴染み風に演技するんなら棒読みやめてくんないかな痛い痛い痛い!!」
ぎゃあああ、と空間中に断末魔が響き渡ったところで私は四の地固めを解除する。
よくそんな状況で無駄に長いツッコミ出来るな、とか色々思うところはあったのだけれど、今の状況を纏めることが先決だと思いそれはやめておくことにした。
「ねえ、この状況ってもしかして……」
「……死んだと思って良いんじゃないか?よくある天界のミスで以下略……みたいな。つーかもっかい言わせて、なんで四の地固め?」
私と同じ予想を口にする蒼輝――最後の一言はスルーしておこう――というか、高度から高速落下してきたチーターに踏まれて大怪我で住む訳が無いだろ。
「じゃあ私達チートとかもらえんのかな?チーターだけに」
「『今自分うまいこと言った』みたいな顔やめよう?微妙に腹立つ」
死んだとわかっているのに関わらず、緊張感のない会話をする私達の目の前で、ようやく変化が訪れた。
暖かい光が1箇所の空間を包み込み、眩い光を放ったのだ。反射的に目を瞑った私達は、暫くして光が収まった事を感じ取り、ゆっくりと目を開ける。
先程まで光を放っていた箇所に目を向けると、前述した通りの黒目黒髪な美しい女性が立っていた。
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