プロローグ

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もう、こんな世界にはいたくなかった。 バイク好きだったパパは、私とママと妹の目の前で大型トラックに撥ねられて死んだ。バイクもパパも、どちらもグチャグチャだった。 ママは私と妹を育てる為に必死に働いた。夜の仕事にも手を出した。私達はそのおかげで生きて行く事が出来たが、ある日ママは死体で見つかった。警察によるとレイプされたあとに殺されたようだった。この時私は8歳だった。 それからは金持ちの親戚の家に引き取られた。けど、そこで待っていたのは親戚によるイジメの毎日であった。親戚の息子にあらぬ噂を流されて、家でも学校でも心が休まる日は無かった。 引き取られてすぐに、妹が行方不明になった。そこから七年間、妹の帰りを待ち続けた。けど、もう心のどこかで妹はこの世にいないということも悟っていた。 親戚が行方不明の妹を死亡扱いにしたのと同時に、私は独りになった。もう、失う物は何もなくなった。この世に留まる理由もなくなった。 そして私は今、新幹線のホームへと立っていた。私は飛び込み自殺をするつもりだった。親戚は金だけはあったので、私が飛び込み自殺をした際の損害賠償はきっかりと親戚へ向かうだろう。ちょっとした復讐だった。 新幹線のホームに、アナウンスが流れ始める。間もなく新幹線がホームを通過するようだった。それを聞くと思わず足が震える。私は今からこの新幹線に飛び込むのだ。死ぬ事が恐いと心のどこかで言っているが、それを押し殺して一歩一歩足を進めていく。 私の見るからに怪しい行動を見たであろう駅員が、私を止めようと走ってきた。それを見た私は思わず走り出す。そして、新幹線がすぐそばに迫った瞬間、私はホームから飛び込んだ。 痛みを感じる間もなく、私はは弾き飛ばされる。ほんの一瞬だけちぎれた私の体が視界に入ったが、すぐに私はブラックアウトした。
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