第1章

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「違う!マジなんだって!」 「…ふーん。もう騙されないよ!」 「ドッキリじゃねーから!」 「はいはい。迫真の演技だね」 「…もういい!とにかく来れないんだな?」 「今仕事中だから無理だって。今回のドッキリは“大成功”じゃなくて“大失敗”だったね」 俺は電話をブチっと切った。。 …そりゃそうだ。 こんな話を信用する方が無理な話だ。 俺は今、オオカミ少年の気持ちが痛い程よく分かった。。 第一、完全犯罪て何だよ。 何て説明すればいいんだ。 色々なことがありすぎて上手く説明できないし、理解してもらうのは到底難しい。どうしよう。。 隣のマンションから声がする。 誰かが電話で話しているようだ。 まずい、見つかったら通報されそうだ。俺は今、普段人が入らない様な怪しい場所で怪しい格好をしている。 今の電話、誰かに聞かれてなかったかな。。 ふと、自分の腕に目を向ける。 右腕にも左腕にも注射の跡がたくさんある。。 「…やりすぎた」 覚醒剤を打った時の注射の跡がそこら中に残っている。 この真冬に靴も履かずに半袖1枚。 腕には近くで見るとすぐにわかる注射の跡。寒いのに汗でビショビショ。。 通報されるのも時間の問題だ。。 捕まる前に、何とか殺しの方のアリバイを証明できなければ、俺は殺人犯としてジジィになるまで刑務所暮らしになってしまう。。 急がないと!! でも、他に都内に知り合いもいない… どうしよう… あ!前の会社の同僚のザキヤマが確か小岩に住んでたはず! 急いで電話をかける。 …プルルル..プルルル.. 「もしも~し♪」 出た! 「ザキヤマ!今何やってる?」 「今普通に仕事中だけど♪どーしたの?」 …それからチャックの時の様に、ここまで来てもらえるように話したけどやっぱり無理。 この状況を上手く説明出来ないし、相手にも伝わらない。。 …他に誰かいなかったか!? 俺は携帯の電話帳を何度も読み返す。 でも都内の奴なんか何度見ても見当たらない。 …その時、急に知らない男が現れた! 「!!!」 心臓が止まりそうになる。 何も言えない。 男も何も言わない。 少しの沈黙が流れる。 俺は苦しまぎれに会釈をして、そのまま携帯をいじっていた。。 男は会釈を返すこともなく、そのまますぐにいなくなった。。 …今の誰だ!? …あいつの仲間か?? …ただの通行人?? どっちにしてもまずい!! 通報される!!
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