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「…じゃあな、由妃」
数枚の一万円札をテーブルに置き、ゆっくりと歩き去って行く彼の背中を悲しそうに見つめる彼女
姿が消える、見えなくなる最後の最後まで見つめていた
「……理由…言いなさいよ」
一人残った彼女の周りのカップル達の幸せそうな声は、雑音でしかない
しばらく途方に暮れ、ボーッとしていると、一人になった私を不審がったのかウェイターが話しかけてきた
「お客様?いかがなさいました?」
「………ワイン……」
彼女は低く、小さな声で呟く
「…はい?」
聞き取れなかったのか、丁寧に聞き返す店員
「さっさとワイン持ってこいって言ってんのよ!!」
「ヒッ ……!!」
鬼のような形相で、睨んできた彼女に腰を抜かし店員は逃げるように注文を受け、厨房に走り去った
はぁ………
飲まなきゃ、やってらんないわよ
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