おじさんになっても好きなモノは好き

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異世界に続く異次元ゲートを用意して、彼女を肯定するように頷く。 「じゃあ、行きますね」 「行ってらっしゃい。はいコレ」 シルバーの雪の結晶が描かれたデザインのイヤリングを手渡す。 「これは……イヤリング?」 「うん。通信機になってるから、なにかあったら連絡して」 「あ……でも、落としちゃうかも」 「大丈夫。外れないようになってるから。それと、羽根」 「はね?」 「そ、天使の翼。これで自由に飛び回れるから」 バサリと服の上から翼が生える。黒い服に映える純白の翼。 「頑張ります!だから――」 「……考えておくよ」 イヤリングを彼女の耳につけ、囁かれた言葉に苦笑いで返した。 「はい!」 思い切り飛び込んで、器用に翼を出して消えて行く。 慣れたモンだなーと思って眺めていると、部下がどこからともなく現れた。 「神様、遅ればせながら」 「ご苦労さま」 彼女に関して書かれた書類を見て、もしかしなくてもすごいコを部下にしちゃったかも、と苦笑が漏れた。 希崎=アメリア=アリッサ。22歳。 都内の大学に通う日本人だが、隔世遺伝で祖母の容姿を受け継ぐ。 職業:大学生兼天使人。 天使人ってのはゼウス様が設置した、地球に溢れかえった荒魂(あらみたま)を狩る人間の天使のこと。 どうりで慣れてるワケだ。 二つ名を魂刈りのアリッサ。強さが要らないってのはこのことね。
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