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別れを惜しみつつも、ルナは時空の狭間に滑り込んだ。もう会えないのかも知れない。
でももし会えるなら何か出来ないのか。ルナはジェシカを救う術を探した。
しかし見つけたのは
何度も何度も試みて、何度も何度も挫折した…
…妖精界へ帰る術だった
ルナは人間界を訪れた。
目の前には白い棺。眠っているかのように横たわるのは、幸せそうな顔のジェシカ。
周りにはまた険しい顔の人間。
救う術はついになかった。そもそも寿命を延ばすことはどんなものにも不可能だった。
術があってもそれは自分のような妖精ごときには使うことも出来ない。
寿命だったんだ。仕方ないんだ。人間の寿命は短いんだ。
そんな事を思っても、流れ落ちる涙は止まらなかった。
ルナはジェシカの手に自分の手を乗せた。
「人間の友よ。恩人よ。帰るすべが見つかった…。安らかに眠れ。」
ルナはジェシカの手の甲をトントンと叩いた。
そしてその手に小さな文字が書かれているのに気づいた。少し滲んでいるが読めた。
「棚の中へ」
ルナはすぐに部屋の棚に向かった。いつもお菓子を出してくれた棚に。
棚は開いていた。その側に人間。ジェシカの娘が見張りのように立っていた。ジェシカが生前に頼んだのかもしれない。
そしてルナは棚の中を見て驚いた。日持ちするクッキー。手作りの飴。妖精の焼き印の入ったケーキ。
よく見るとクッキーにも飴にも全てに妖精の印があった。
一口食べると力が湧いた。
ジェシカが作ってくれていた。先に逝ってしまうことを知ってこんなにも作ってくれていた。
ふと横を見ると棚の扉の裏に、妖精の文字が書いてあった。
[この扉は全てのお菓子が消えるまで開けておきます。楽しい時間をありがとう。さようなら。]
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