第1章

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ルナは泣き止んでいた。何時間たっただろう。いや、そもそも時間は止まっている。 ルナは棚の奥にルナサイズの服があるのに気づいた。 3度目に訪れたときにジェシカが作ってくれた服。あの時歪だった服は、綺麗に修正されていた。背中の空いた緑色のワンピース。 今着ている服もジェシカがつくってくれたピンク色のワンピースだが、その緑色のワンピースには綺麗な刺繍がされていた。その糸はかなり高価な糸だとジェシカが自慢していた糸だ。 側にあった紙には [いつか帰る時のために] と書いてあった。 ルナはグッと溢れそうになる涙を押さえ、ワンピースを抱き締めた。 白い棺。その縁にルナは立っていた。緑のワンピースを着て… ルナはジェシカの手に触れた。 色々な事をしてもらった。力を貰った。異世界に独りぼっちだった自分を救ってくれた。 帰る術を見つけられたのもジェシカのおかげだ。 ルナはジェシカの手をトントンと叩いた。最後のお別れ。 「願わくばまた…出会うことを…」 ルナは静かに目を閉じた。 涙が頬をつたった… 手をまたトントンと叩いた。起きることのないジェシカ。もう二度と。 叶うことのないお別れの呪文。
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