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迷い込んでしまった古ぼけた洋館。 重い扉を何枚か過ぎた先に、彼女はぼんやり佇んでいた。 「お父様以外の人には会った事がなくて」 お人形さんみたいに、宝石みたいに美しい笑顔。 一瞬で強く魅了されて、その一瞬で彼女の境遇を察してしまった。 「君は」 「あのね、お父様はね」 楽しそうに話す彼女の胸元や、ドレスの袖、裾から何かイメージのような物が溢れてくる。 タイトルあらすじ章題本文。 どろどろしてきらきらしてもやもやした何か。 「……君は」 ソレはとても面白い物語だった。 身震いするくらい、涙を流すくらい、背後に立つ誰かに気付けないくらい、とてもとても。 「あ、お父様!今ね、お客様に」 きっと独り占めしたくなったんだ。 何気なく思いついて、何となく組み立てて、予想以上に素晴らしく完成してしまった物語を。 誰にも読まれないように、閉じ込
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